こうした中、新たな課題としてクローズアップされているのが「生活機能病」、「生活不活発病」です。
生活機能病とは「日常生活に著しい障害を与える先天性または後天性の運動器疾患を中心とする疾患群」のことで、生活不活発病とは廃用症候群ともよばれる「生活が不活発になることによって頭や心まで含めたはたらきが低下する病気」のことです。生活機能病と生活不活発病は、互いが原因であり結果であるという悪循環の関係にあり、直接的には生命予後に関係しないものの、高齢者の生活の質(QOL:Quality of Life)の著しい低下につながることから、その概念の普及と対策が急務とされています。
なんとなく「年だから」と高齢であることを理由に、しょうがないもの、ある意味でそれが自然の摂理、と考えてきた高齢者の生活スタイルそのものが高齢者の生活の質を下げる原因のひとつとして作用しているのです。
かつての「成人病」は、今日では「生活習慣病」として定着し、その発生に生活習慣(肥満、運動不足、喫煙、栄養バランスの乱れなど)が深く関与していることが広く認識されたことによって予防への取り組みが進みました。高齢社会 が進む日本では、今後は生活習慣病に加えて、生活機能病 、生活不活発病 の予防に向けた取り組みが急務であると考えられています。
こうした取り組みの萌芽は既に国の施策として始まっています。
「すべての国民が健やかで心豊かに生活できる活力ある社会とするため、壮年期死亡の減少、健康寿命の延伸及び生活の質の向上を実現することを目的」とした運動である「健康日本21」では、9つの項目で数値目標が設定されていますが、糖尿病、循環器疾患、がんよりも先に目標として設定されているものとして「身体活動・運動」があります。
その中で、いわゆる“高齢者の生活スタイル”が、身体的な生活機能だけでなく、精神的、社会的な生活機能をも低下させる大きな要因であることが指摘されています。このことは、今日の生活機能病 、生活不活発病 の問題に置き換えることができるのではないでしょうか。
また、他の項目が基本的に成人という区分で数値目標が設定されているのに対して、「身体活動・運動」だけは高齢者に対する数値目標が独立して設定されていることからも、その重要性と対策の必要性が緊急の課題であることが理解できます。
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