INTERVIEW No.2
薬学博士/城西大学薬学部 教授・製薬学科 主任
杉林 堅次・すぎばやし けんじ
1951年滋賀県生まれ。74年富山大学薬学部卒、76年同大学院薬学研究科修了。 同年、城西大学薬学部助手。講師、助教授を経て98年教授。この間、82,83年ミシガン 大学、ユタ大学留学。香粧品学会理事、薬剤学会・DDS学会評議員。薬剤学論文編集委員長。3英文誌のeditorial board。
主な著書
「化粧品・医薬品の経皮吸収」監訳(フレグランスジャーナル社)
「生物薬剤学」(エルゼビア)
いつまでも若々しく健やかにと願うのは、お肌のトラブルが気になる20 - 30代の女性に限りません。10代から40 - 50代、さらには80 - 90代の女性まで、もちろん男性も含む全ての人々がいつまでも健やかに若々しくありたいと願います。
病気にならないための運動や栄養、さらにお肌のケアは生活レベルが向上した現代人にとって今まで以上に重要なものになるでしょう。化粧品はもちろん容貌を変えるために使用することもありますが、化粧をして、肌に栄養を与え、肌の健康を整えておけば、朝、鏡の中の自分を見て、はつらつとした気持ちでその日のスタートを切ることができます。
なんと清々しいことでしょうか。
シミとシワは肌年齢、さらには顔や首筋から受ける若々しさの判定に最も深く関係します。
シミの原因には日光やホルモンバランスなど様々なものがあります。一方、シワの原因にも日光が大きく関係することがわかってきています。深いしわは皮膚の表皮より深い真皮に至っており、特に15歳ぐらいまでにどのくらい日光にあたったかによって左右されるといわれています。
これに対し、比較的浅いシワは表皮の最表面にある角層の乾燥に関係するので角層を保湿すれば小ジワは防ぐことができます。パックで処理した後やお風呂上りにシワが目立たなくなることをお気づきでしょうか。これは角層の保湿と関係します。角層が乾燥すれば、肌に簡単にキズがつき、さらに化粧ののりが悪くなります。
また、皮膚の乾燥がひどくなると、ひびやあかぎれの原因になります。特に冬場は乾燥しやすいため、角層にいつも最適な保湿性を持たせておくことが重要です。
保湿クリームや保湿ローションは、従来に比べ大変効果的なものが増えてきました。
いままで保湿剤に最もよく使われてきたものの1つにヒアルロン酸 があります。この薬品の名前についてはお聞きになった方もいらっしゃると思います。皮膚以外にも、眼の硝子体、へその緒、関節液などに存在します。体中ではゲル状で細胞間に存在し、細菌や毒物の侵入を防ぐ役割があります。化学的にはアミノ糖やウロン酸からなる多糖類の一種です。
しかし、ヒアルロン酸製剤は数時間毎に適用する必要がありました。そこで、今回私どもが注目したのがコンドロイチン硫酸です。これは生体中ではタンパクと結合しており、軟骨や皮膚、へその緒に存在します。化学的にはアミノ糖、ウロン酸、硫酸、酢酸からなる複雑な多糖類です。
ちょっと難しくなりますが、この2つの保湿剤成分の構造式を示しておきます。構造が似ていることがわかると思います。
私どもはヒアルロン酸 とコンドロイチン硫酸の皮膚保湿作用をボランティアに協力してもらい試験しました。もちろん、動物を用いた試験も行いました。
その結果、ヒアルロン酸 とコンドロイチン硫酸共に保湿作用があるものの、作用様式には違いがあることを見出しました。すなわち、ヒアルロン酸 を適用した角層は高い水分吸収能を示すものの、残念ながら適用後4時間ぐらいの角層の保湿能はそれほど高くはなりませんでした。
それに対して、コンドロイチン硫酸は、角層の水分吸収能がヒアルロン酸 と同様に高い値を示したことに加え、適用後数時間経ったときの保湿能がむしろ上昇傾向を示し、その効果もヒアルロン酸 に比べ高いことがわかりました。すなわち、コンドロイチン硫酸は吸水能も保湿能も高く、さらに作用が持続するという、角層の保湿にとってきわめて有用な働きをすることがわかりました。コンドロイチン硫酸の持続的かつ高い吸水・保湿能は大きな特徴になると思います。
また、ヒアルロン酸 とコンドロイチン硫酸の混合液についても試験しました。その結果、それぞれの特徴をさらに推し進める可能性が示唆されました。これらの結果を基礎にして、コンドロイチン硫酸を単独で用いて、またはヒアルロン酸 と組み合わせて、皆さんにお役に立てる保湿クリームや保湿ローションができることを期待しています。
Copyright (C) ZERIA Pharmaceutical Co.,Ltd. All Rights Reserved.