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INTERVIEW No.5

「コンドロイチン硫酸を含む生物」

農学博士/東京農工大学農学部
附属硬蛋白質利用研究施設 助教授

野村 義宏・のむら よしひろ

1962年宮城県生まれ。1984年東京農工大学農学部卒。1990年同大学院博士課程修了。
1990年同大学農学部附属硬蛋白質利用研究施設 助手。2003年同施設 助教授。

コンドロイチン硫酸は、鯨の軟骨から分離され利用されてきた。商業捕鯨が禁止されてから、その原料はサメ軟骨に推移し、その後、ウシやブタの気管軟骨も併用されてきた。牛海綿状脳症の発生以来、その原料は主にサメ軟骨とブタ気管軟骨が主流になっている。
哺乳類では、コアタンパク質に結合したプロテオグリカン 専門用語アイコン として存在することが多く、軟骨、骨、靱帯、角膜、脳、血管、皮膚などに存在している。コンドロイチン硫酸の生物学的分布は非常に広く、節足動物のカブトガニ、軟体動物のイカ軟骨にも存在していることが知られている。
脊椎動物においては、ウナギやナマコに代表される円口類、サメなどの軟骨魚類、マス、コイ、タラなどの硬骨魚類、カエルなどの両生類、ワニなどの爬虫類、鳥類そして哺乳類と大部分の動物に存在している。また、カレイやウナギの粘性物質、貝類の外套膜、魚鱗にも存在している。
北海道では鮭の頭部軟骨が‘氷頭’として、青森ではイカ軟骨由来のコンドロイチン硫酸として市販されている。サメ軟骨、スルメイカ軟骨やカブトガニ軟骨には、硫酸基を二糖単位あたり1モル以上含むコンドロイチンポリ硫酸が存在している。

図1 代表的なコンドロイチン硫酸の化学構造

図1 代表的なコンドロイチン硫酸の化学構造

硫酸基の結合位置と数からコンドロイチン硫酸A, B, C, D, E, H, Kの7種類に分類される。
コンドロイチン硫酸A(コンドロイチン4硫酸)は、N-アセチル-D-ガラクトサミン(GalNAc)とD-グルクロン酸 (GlcA)の4位に硫酸基を持つ二糖の繰り返し構造を持ち、コンドロイチン硫酸C (コンドロイチン6硫酸)はGalNAcの6位に硫酸基を持っている(図1)。
コンドロイチン硫酸Dはサメ軟骨から単離され、コンドロイチン硫酸Cに似た構造を持ち、GlcAの2ないし3位にも硫酸基を持つ。コンドロイチン硫酸E(コンドロイチン4,6硫酸)はスルメイカ軟骨から単離され、GalNAcの4および6位に硫酸基を持つ。
コンドロイチン硫酸B(デルマタン硫酸)およびH(デルマタンポリ硫酸)は、イズロン酸 (IdoUA)とGalNAcの繰り返し二糖からなり、硫酸基の結合量が異なる。また、コンドロイチン硫酸Kはカブトガニ軟骨から単離されたコンドロイチン硫酸であり、コンドロイチン硫酸Aに似た構造を持ち、GlcAの2ないし3位に硫酸基を持つ。その生物学的意義は不明であり、硫酸基の結合位置も規則性も明らかとなっていない。

佐賀大学の中川氏が「魚介類のコンドロイチン硫酸の分布と濃度」について報告している。
ハマチ、マダイおよびコイの各乾燥組織1g当たり、魚皮で約2〜3mg、魚肉で0.1〜0.13mg、脊椎骨で2〜3mg、心臓で2〜3mg、鰭で3〜4mg、鰓で8〜16mg、眼球で6〜9mgであった。
未利用資源のコンドロイチン硫酸原料として考えると、集約的に資源確保可能なものとしてウナギの脊索、ナマコの体壁、貝の外套膜、魚鰓および眼球が注目できる。