INTERVIEW No.7
宮城大学食産業学部教授
西川 正純・にしかわ まさずみ
1960年石川県生まれ。82年東北大学農学部を卒業後、大洋漁業株式会社(現、マルハ株式会社)に入社。中央研究所で海産物由来の機能性食品素材並びに医薬品素材の開発に従事。88年から92年まで東北大学医学部大学院研究生として内地留学。04年4月より、宮城大学食産業学部教授。
薬学博士(1997年東北大学)
医学博士(2001年九州大学)
コンドロイチン硫酸は1950年代後半に医療用医薬品として認可されて以来、今もなお一般用医薬品、健康食品の成分として幅広く利用されている。
医薬品としての適応は、変形性膝関節症 を神経痛、筋肉痛・関節痛(腰痛、肩こり、五十肩など)、手足のしびれ、神経性難聴、音響外傷性難聴、眼精疲労の改善、および角膜表皮の保護となっている。
ご存知のように少子・高齢化 が進んでいる日本では、2006年に65歳以上の老齢者の割合が20%を越えた。厚生労働省の国民生活基礎調査では、65歳以上の老齢者の病気やけが等での自覚症状、いわゆる有訴者数は、男女とも腰痛、肩こり、手足の関節痛が上位を占めており、その割合は合わせて男性では2割強、女性では4割に達している。老齢者の3人に1人は手足や腰が痛いということになる。
昨年、NIHが中心となって実施したコンドロイチン硫酸、グルコサミンの変形性関節症に対する1500人を超える大規模臨床試験(GAIT研究)の結果が論文として報告された。患者全体では対照薬のセレコキシブに敵わなかったものの、中等度以上の重症患者では、コンドロイチン硫酸とグルコサミン併用群がプラセボ(偽薬)群に比べ有意に鎮痛効果を認め、コンドロイチン硫酸の関節痛に対する有用性が改めて示された。
また、昨今コンタクトレンズによるドライアイが増加しているが、保水性が高いコンドロイチン硫酸は同じムコ多糖 類のヒアルロン酸 と共に医療用・一般用点眼薬として用途が拡大している。
コンドロイチン硫酸の研究は、東京大学の江上不二夫先生らが頭痛薬としての可能性を探ったことに始まったことは有名であるが、その流れの一端に、頭痛や頭重、倦怠感、疲労感、不眠、耳鳴り、しびれ、四肢冷感などの症状を訴えても検査によって原因となる病気が特定できない、いわゆる不定愁訴についての臨床研究がある。
全国2200例にもおよぶ大規模な臨床報告であり、軽度以上の改善率はほとんどの症状で70%から80%後半と効果的であった。また、患者の自覚症状と臨床評価との相関性も高かった。不定愁訴は更年期障害のみならず、現代のストレス社会が引き金となっているケースが多く、社会の高度化と共に患者数も増加しており、コンドロイチン硫酸の活躍の場が増えると予想される。
また最近、神経再生など神経機能への関与が話題を集めており、中枢神経系での新たな展開が興味深い。
医薬品として半世紀の歴史を持つコンドロイチン硫酸であるが、古い素材ながら、新しい可能性を秘めて未だ輝きを失っていない。今後益々進行する超高齢社会とストレス社会の切り札として国民の健康に寄与することを願ってやまない。
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